白。
それは、明るく喜びに満ちた希望の色。
儚く悲しみをはらむ色。
翳りなく染まらない強い色。
始まりと終わりの色。
さまざまな彩りと和を紡ぐ色。
「白」という色には、様々な情景を呼び起こす力がある。
この度ROOTS to BRANCHESでは、5月13日 (土)より、“白のうつわ展” を開催いたします。
「白」を題材に、作品制作をお願いしたのは八つの工房と作家さんたち。
当店にて既にお取り扱いのある〈mushimegane books.〉、〈工藤真人工房〉、〈ハラダマホ〉さん、〈小松野洋介〉さん、〈瀧本徳郎〉さん、〈佐々木康弘〉さん。
さらに、今回初めてお声がけをさせていただいた〈髙田志保〉さん、〈船串篤司〉さん。
素材、技法、質感、色の濃淡、そして形。
ひとえに「白のうつわ」と言えど、作り手による様々な個性と表現があります。
作家さんそれぞれが「白」に向き合い、「白」を捉え、「白」を表現した作品が、一堂に会する展示です。
使い込むほどに愛着が深まる魅力。どんな色とも和を結ぶ柔らかさ。生活に馴染む美しい佇まい。
あなたにあった「白のうつわ」との素敵な出逢いを探しに、是非お立ち寄り下さい。
mushimegane books.
旅先で思わずひろってしまう、まるで美しい石のような、まあるくぷっくりとした輪郭と、手に吸い付く質感。
兵庫県に工房を構える〈mushimegane books.〉は人と音をテーマに、熊淵未紗さんが作陶を手がけるセラミックブランドです。その精巧な造形と、貫入のひびによる味わい深さに、一同息をのみました。
生活陶器としての使い勝手の良さもありながら、食卓以外の場所でインテリアとしても楽しめる、美しい佇まいを持ったまさに用と美を兼ねた作品です。
熊淵未紗(くまぶち・みさ)
岐阜県多治見市意匠研究所終了
デザイン事務所にて勤務オーガニック食品関連の会社にて勤務
兵庫県にて工房を構える
工藤真人工房
茨城県は阿字ヶ浦。海と山に挟まれたこの地に工房を構え30年。
夫婦二人三脚 (と猫ちゃん) で世に多くの生活陶器を送り出しています。
「豪傑」という言葉を体現したような力強い生命力とエネルギーに満ちた工藤真人さん。
マットの白釉薬を重ね焼きしたうつわたちはほんのり黄色味のニュアンスかかり、優しい生活の情景が目に浮かぶとっても素敵な仕上がりになっています。
日々うつわを使ってゆく中で、なるべく汚れが残らないように、という試行錯誤があったと聞きます。
使う人の顔を想像しながら、轆轤を回すという工藤さんらしい配慮と、優しいお人柄が滲み出ているなと思いました。
工藤真人(くどう・まひと)
1958年 東京都港区赤坂に生まれ。 新宿歌舞伎町で育つ。
1980年 早稲田大学中退。 1980年 愛知県常滑で陶芸の修業。
1984年 スペイン、イラン、インドで工芸の研究。
1987年 茨城県阿字ヶ浦町にて作陶開始。
ハラダマホ
「練り上げ」という技法上、ハッとするような幾何学的な模様を、普段は色鮮やかな配色で表現をする〈ハラダマホ〉さん。
まさか「白」でお題を投げかけられるとは思ってもいなかったでしょう……マホさん、ご快諾いただきありがとうございました。
難題にも関わらず、仕上がったうつわは見事に〈ハラダマホ〉らしさと、真珠と海をイメージした「白」への解釈が融合した唯一無二のものでした。
北欧クラフトのようなモダンさと、日本の伝統的紋様を兼ね備えたような佇まい。
精密かつ卓越した技術に裏付けられた、”練り上げの白”をお楽しみ下さい。
ハラダマホ
1977年 熊本生まれ。
1999年 佐賀県立有田窯業大学校卒業。會田雄亮研究所入社。
2001年 熊本にて設窯。
佐々木康弘
伝統工芸品である益子焼を制作されている佐々木さん。白のマーブルシリーズでリクエスト。
地産の土と益子伝統の釉薬。そして”掛け分け”という伝統的な技法が織りなす、美しい白のあわい。
古くより伝わる技法と佐々木さんの手によるモダンな佇まいが印象的です。
どのようなしつらえにしようかしら。今から想像力を掻き立てられます。
きっとどんなお料理も美味しく引き立ててくれるでしょう。
佐々木康弘(ささき・やすひろ)
1981年生まれ 益子窯業指導所で学び、 現在は益子町の隣、茂木町で制作しています。
白の器は2年前から作り始めました。
髙田志保
今回、初めてのお取り扱いとなる〈髙田志保〉さんは、炭貫入を得意とする京都の作家さんです。
先端をきゅっと摘んだような、片口型のお皿や花型の小鉢は、見る角度によって印象がガラリと変わります。
青みがかった儚げな雰囲気と可憐さを内包した、洗練されたフォルムが美しいです。
個人的には、和食を楽しみたい白のうつわだなと思っています。
髙田志保(たかだ・しほ)
1977年奈良県生まれ
2001年京都府陶工高等技術専門高 入校 京都亀岡にて独立
小松野洋介
天草のうつわ、〈小松野洋介〉さん。
当店でお取り扱いのある小松野さんの作品といえば、イエローやグリーンなどポップなカラーが印象的ですが、スープカップのぽってり可愛い白化粧の質感がいいなと思い、今回の企画展に寄せて大人気のカレーパスタ皿・多様鉢と共に真っ白なうつわに仕上げていただきました。
食をとりまくあらゆるシーンに馴染む普遍性がありながら、食卓や食器棚での存在感ある佇まいにハッとさせられるでしょう。
小松野洋介(こまつの・ようすけ)
1966年熊本県上天草市生まれ
1991年から熊本県本渡市(現天草市)の丸尾焼、
1998年から陶象(陶芸材料店)で焼物や原料の技術と知識を習得
2000年21世紀アート大賞立体の部入選、2001・2003年陶芸のまちづくり大賞グランプリを受賞
2003年に洋々窯を開く
2007年AMAKUSA陶芸展で日比野克彦賞受賞
2008年四日市陶磁器コンペ2008入選
船串篤司
こちらも今回初めてのお取り扱いとなる〈船串篤司〉さんのうつわ。
茨城県笠間市に開窯された、土の質感をしっかり感じる器肌が魅力的です。
シンプルな造形ながら空間に心地よさをもたらし、毎日の食卓に大活躍する予感。
船串篤司(ふなくし・あつし)
茨城県水戸市出身。酒井芳樹氏に師事し、茨城県窯業指導所 釉薬Ⅰ科修了。
2009年笠間市にて独立。料理を盛って完成する器を生み出しています。
瀧本徳郎
“使う人の手に馴染み、色や質感はなんだか嬉しくなるようなものにしたい”
豊かな自然に囲まれた宮崎県都農町で生活陶器を作り続ける「白水工房」の〈瀧本 徳郎〉さん。
当店では長きに渡りお取り扱いのある作家さんになります。
今回は麦の穂柄が施された「粉引の白」を。土本来の手触りと、心地よい渋みのある白がたまりません。
手に取れば軽く、暮らしに重厚かつ繊細なアクセントを添える唯一無二の仕上がりになりました。
瀧本徳郎(たきもと・とくろう)
1974年 宮崎県生まれ。
1995年 佐賀県立有田窯業大学校卒業。
2000年 KOBATAKE工房彫刻基礎科終了。
2000-2002年 青年海外協力隊に参加し、エルサルヴァドル国立芸術センター陶磁器科講師として活動する。
2003-2006年 メキシコシティで陶器の制作及び展覧会等をする。
2006-2011年 舞台美術、テーマパーク等の美術制作に従事する。
2011年 宮崎県都農町に白水工房を開く。
“白のうつわ展”
at ROOTS to BRANCHES
会期:2023年5月13日(土) – 5月21日(日) 11:00 – 19:00
会場:ROOTS to BRANCHES
住所:東京都 目黒区 青葉台1丁目 15-9