日々の暮らしに”工芸”を。
生活用具としての実用品でありながら、材料、技巧、意匠による美しさを備えたもの。
作り手の想いとともに、静かに暮らしに寄り添うもの。
現代の生活様式に則って、より便利に、より速く、より多く、より安く。あらゆるものの生産が効率化され、量産品が溢れ、消費されるこの時代だからこそ、その対極にある”手づくりの工芸”をお薦めします。
手間ひまを惜しまず、人の手によって作られたものには物語が宿ります。
一つひとつ生み出されるが故のばらつきは、この世に二つとないものを持つ喜びにも繋がります。
ROOTS to BRANCHESが各地を巡る中で魅せられた”工芸”の数々。どんな土地で、どんな人の手で、どんな想いを持って作られたかをシリーズでお届けします。
第一回目では、4名の生活陶器の作り手たちをご紹介します。
ROOTS to BRANCHESがきっかけとなって、あなたの暮らしと、素敵な”工芸”との出逢いがありますように。
“使う人の手に馴染み、色や質感はなんだか嬉しくなるようなものにしたい”
豊かな自然に囲まれた宮崎県都農町で生活陶器を作り続ける「白水工房」の〈瀧本 徳郎〉氏。
麦の穂柄を施された粉引のカップや、焼き締めの急須などなど。瀧本氏が作陶する土物特有の温もりを持った作品の中でも、とりわけ目を引くのは、赤や黒の鉄化粧を施した陶器の、色のグラデーション。
心地よい渋味のある椀や皿は、手に取れば軽く、暮らしに優しく馴染む。食卓に戸棚に、重厚かつ繊細なアクセントとなります。
瀧本 徳郎(たきもと・とくろう)
1974年 宮崎県生まれ。
1995年 佐賀県立有田窯業大学校卒業。
2000年 KOBATAKE工房彫刻基礎科終了。
2000-2002年 青年海外協力隊に参加し、エルサルヴァドル国立芸術センター陶磁器科講師として活動する。
2003-2006年 メキシコシティで陶器の制作及び展覧会等をする。
2006-2011年 舞台美術、テーマパーク等の美術制作に従事する。
2011年 宮崎県都農町に白水工房を開く。
茨城県阿字ヶ浦に拠点を置く〈工藤真人工房〉。
調度品収集家の父と古美術商の母の元に生まれた窯主、工藤真人氏は幼少より北欧クラフトや古美術作品に触れて育ちました。
20代半ばに世界を旅する中で多くの実りを得、日々の様々なシーンにすんなりと馴染む、生活の器を作り続けいます。
特に、深いコバルトブルーの力強い器は工藤氏の真骨頂。モノとして美しく、食材の色彩を鮮やかに引き立てます。
栃木県益子町を拠点に活動する作家〈坂下 花子〉の陶器は、類稀なるカラーリングセンスからなる様々な美しい模様が特長です。
異なる色の粘土を何層にも練り合わせて模様を作る”練り上げ”技法で作られる器たちはそのネーミングがとても可愛い。
「うずらのぐるぐる」などチャーミングな名付けに表情はほころび、ついつい「ウチの子にします!」となってしまう。
日常の安らぎの時間を共に過ごしたい、淡く優しい暮らしの道具になります。
熊本県阿蘇市にて作陶をしている作家〈山下 太〉。
阿蘇の山に、自ら土掘りに行くところから始まる山下氏の器作り。綺麗に精製されたものとは違う表情豊かな土と、溶岩や火山灰・草木など、身近に存在する雄大な阿蘇の自然由来の素材を使うことで、唯一無二の器を生み出しています。
力強い曲線。愛着が湧くヒビ模様。存在感のあるその佇まいは、大人たちの所有欲をくすぐってやまない魅力です。